ブレーキには2種類のブレーキングが存在します。
まず、ひとつ目は、「止まるため」のブレーキングです。
富士スピードウェイの1コーナーや、ツインリンク茂木のダウンヒル、筑波2000の1コーナーや2ヘヤピンなどなど、高いスピード域から一気に減速を伴うコーナーなどに使用します。
基本的に、シフトダウンを行い、最大踏力でブレーキングを行うコーナーは、すべて止まるためのブレーキングで始まるということになります。
ポイントは、「いかに速く減速しスピードを落とすか」です。これができると、ブレーキングポイントをどんどん奥にとれ、ラップタイムを向上させることができます。また、サーキット走行で最もエキサイティングな瞬間である、オーバーテイクが容易になります。
ふたつ目は、上記、止まるブレ-キの後半部分となる「曲がるため」のブレーキングです。
これは、最大踏力で「止まるため」のブレーキングを行った後、コーナーに近づきステアリングを切る少し前から行います。
また、筑波2000のダンロップ下や、鈴鹿のS字コーナー、岡山国際のリボルバーなどなど、フルブレーキはなく、短く優しいブレーキでフロントに少し荷重を移動させ、曲がりやすくするのも、「曲がるためのブレーキング」となります。
ポイントは、コーナーへの進入時に、いかにアンダーステアーを出さないかです。
「止まるため」のブレーキングは、止めることが目的であれば、「曲がるためのブレーキング」では、アンダーステアーを出さず、曲がること(曲げること)が目的になります。
下のグラフを見てください。
これは、富士スピードウェイ(1コーナー)をレーシングカーで走ったときのデータロガーです。黒いラインはスピード、赤いラインはブレーキ踏力、そして青いラインはステアリング舵角をそれぞれ表しています。
①の部分では、一気にブレーキを最大踏力まで立ち上げ、そのまま最大踏力をキープする「止まるためのブレーキング」が行われています。それに伴い、黒いラインのスピードは下降し、減速が進んでいます。
そして、②の部分を境に、どんどんブレーキ踏力が弱まります。ここからが、ブレーキリリースによる「曲がるためのブレーキング」となります。黒いラインのスピードも、下降カーブが少し緩やかになります。③のステアリング舵角を見てもわかるように、ブレーキリリースが始まった直後から、ステアリングを切り込んでおり、この舵角はどんどん大きくなっています。これを、タイヤグリップで説明すると、「止まるためのブレーキング」では、ステアリングを真っ直ぐにし、タイヤの縦方向のグリップを最大限に使用し、一気に減速させています。そして、後半部分では、ブレーキリリースにより、タイヤのタテ方向の力を弱め、ヨコ方向にグリップを使う準備をし、ステアリングを切り込んでいます。これが、「曲がるためのブレーキング」です。
止まるために必要なタテのグリップから、ブレーキをリリースしながらハンドルを切り込んで発生させるヨコのグリップ。「タテからヨコ」へ、確実にグリップの方向を変換するには、これら一連の動作をドライバーが的確に行うことと、ブレーキパッドのリリースコントロール性能がすべてと言っても過言ではありません。