理想のブレーキパッドをチョイスするため、ポイントとなるのは、ロックするかしないかのギリギリでブレーキを踏んでいるときの“力のレベル”=ブレーキ踏力です。
仮に、あるドライバーが一番強くブレーキを踏んだときの力(最大踏力)を「100」と仮定します。そして、このドライバーが、自身の最大踏力の1/5である「20」の力でブレーキを踏んだときにロックする、効きの強いブレーキパッドを使用すると、ロックさせるのに大きな力は必要ありません。しかし、少しの踏力変化で、効きが大きく変わってしまう状況なので、非常にピーキーなブレーキ特性となります。また、ブレーキリリースを考えると、「20」の踏力から、19、18、17・・・・・と、走行中の『G』や振動の中で踏力をコントロールすることは、至難の業となり、リリースコントロールがとてもデリケートになります。反対に、効きの弱すぎるブレーキパッドでは、ロックさせるために必要な踏力が、ドライバー自身の最大踏力を越えてしまうので使用できません。
以上のことから、ブレーキがロックするときの最適な踏力は、自身の最大踏力の「60」~「80」レベルが一番よいと私は考えます。ブレーキパッドに必要とされる踏力には十分で、何よりも、リリースするときに、踏力を徐々に抜きやすいことが最大のメリットです。
たとえば、ブレーキ踏力を7段階に緩めたい場合、「70」の力でちょうどロックするブレーキパッドを使用すれば、「10」の力がひとつの目盛りとなります。しかし、「20」の力でロックするブレーキパッドの場合、この目盛りは、「3」以下となり、デリケートなリリースコントロール(踏力調整)が求められることになるのです。
要するに、ある程度ブレーキを強く踏める(最大踏力の「60」~「80」レベル)ブレーキパッドをチョイスする最大のメリットは、リリース側に踏力調整の幅をもたせ、より精度の高いリリースコントロールが可能となることです。