タテからヨコへ、グリップの方向を変えるのに、必要不可欠なブレーキのリリース。
このテクニックこそ、ドラテクの真髄となりますが、じつはテクニック以外にも可否を左右する大きな要因があります。
それは、ブレーキ踏力を抜いていく時に、実際のブレーキの効きが、いかに踏力にリンクして、弱まってくれるかどうかです。そう、ブレーキパッドのリリースコントロール性能こそ、曲がるブレーキングには、絶対必要な条件となります。
では、グラフを見て下さい。
「ブレーキパッドA」では、踏力をほんの少しリリースした瞬間から、効きが追従して弱まってくれます。ブレーキ踏力というドライバーの意思が、そのまま効きに反映されることから、ブレーキの効きをドライバーが完全にコントロール下に置くことができます。
しかし、「ブレーキパッドB」では、ドライバーが踏力を抜いていっても、ブレーキの効きが弱まってくれません。いわゆる、リリースコントロール性の悪い、パッドとロータが張り付いているようなフィーリングのブレーキパッドです。
一般的に、車重やブレーキサイズに対して、ブレーキパッドμが高い、効きの強いパッドに起こる症状で、こうなると、ドライバーの意思が効きに反映できず、コーナーの飛び込みでアンダーステアが発生します。
なぜ、アンダーステアが発生するかというと、曲げるため(ヨコグリップを発生させるため)に、ブレーキをリリースしても、実際の効きは弱まらないわけですから、ヨコに使うグリップは生まれず、その状態でステアリングを切っても、アンダーステアとなってしまうからです。
また、「ブレーキパッドB」では、踏力を50%近辺までリリースすると、一気にそれも唐突にブレーキの効きが弱まります。「カックンブレーキ」のリリースバージョンです。こうなると、ドライバーは、ブレーキの効きを完全にコントロール下に置くことができず、ブレーキリリースにより微妙なコントロールは不可能に近い状態になります。
このように、ブレーキパッド摩材により、リリースコントロール性能は大きく異なります。
特に、効きの強いパッドでは、ブレーキをリリースし始めた部分で、効きが追従して弱まってくれません。
この、リリースを始めた部分の追従性こそ、タテからヨコへグリップの方向を変換するための生命線となるのです。