従来のワイヤー式スロットル制御と違い、電子スロットル制御では、ドライバーのアクセル操作とスロットルバルブの間に、コンピューターが介入します。
ワイヤー式スロットルであれば、ドライバーのアクセルコントロールに、スロットルバルブの開度が100%リンクした制御となりますが、電子スロットでは、燃費などを考慮して、一番効率が良いスロットルバルブの開度になるよう、コンピューターが制御します。
しかし、電子スロットル制御は、サーキット走行ではデメリットになることがあります。
それは、ドライバーがブレーキングポイントで、アクセルをOFFにしても、実際にスロットルがOFFになるまでの間、モーターの作動スピードが原因となり、ラグが発生することです。
このラグのデメリットを説明するには、先にブレーキのシステムについて少し触れておく必要があります。
ブレーキシステムの中に、エンジンの吸気側の負圧を利用して、ブレーキの力を増大させるマスターバック(倍力装置)というものが装着されています。もちろん、エンジンの吸気側の負圧を利用するわけですから、アクセルをOFFにしている状況でないと、効果は弱くなってしまいます。
そこで、サーキットでのハードブレーキングでは、次のような問題が起こり得ます。
たとえば、ドライバーがアクセルをOFFにして、0.3秒でブレーキペダルを踏み込んだとします。ところが、スロットルバルブがOFFになるのには、ラグがありますので、0.4秒後に完全にOFFになったとしましょう。
すると、ブレーキングが始まった瞬間は、スロットルバルブが完全にOFFとなっていませんので、エンジンの吸気側に十分な負圧が発生しておらず、マスターバックの力を100%発揮することができなくなってしまいます。
結果、マスターバックの効きが足りず、ブレーキが効かないという現象が発生します(正直、かなり恐怖です)。また、この症状は、ブレーキングポイントを遅らせたときに発生しやすくなります。なぜなら、ブレーキングポイントを遅らせたときは、どんなドライバーでも、アクセルからブレーキへの踏み換えが速くなってしまうからです。
この症状を解消する為には、ブレーキをもう一度、踏み直すしかありません。
しかし、タイムアタック中の限界ブレーキングにそんな余裕はないと思います。
ですから、アクセルからブレーキペダルに踏み換える際には、スロットルが閉じるまでのラグを考慮した速さで踏み換える必要があります。
電子スロットルを採用している車でサーキットを走る場合には、必ず、安全な場所で、どれぐらいの速さで踏み換えを行ったら、マスターバックが効かないかを確認してから、アタックを行ってください。
(開発テスト中、特にこの現象が認められた車種はZ33とNCP91です)