ブレーキングマイスターへの道・ブレーキングテクニックのすべてがわかる

【STEP3】間違いだらけのブレーキパッド選び

必要以上の効きはデメリット

最適な効きに合わせるために、摩材をチョイスするのですが、ここで多くのドライバーたちが勘違いしていることがあります。それは、「効き」にマージンをもたせることです。

特に、サーキットビギナーは、「マージン」と称して、BESTの効き+αの効きを求める傾向にあります。中には、効きの強いパッド=良いパッドと思っているドライバーさえいるのが現実です。理由は、「効くパッドの方が安心だから」。もちろん、ただ止まることだけを考えれば、強力な制動力は武器になります。でも、サーキットでラップタイムを狙うとなると、効きが強いことは、まったくメリットにならないどころか、デメリットになってしまうのです。

「曲がるためのブレーキング」でも説明しているように、「タテからヨコ」へ、確実にグリップの方向を変換させるには、ステアリングを切り込む直前に、うまくブレーキをリリースする必要があります。そして、このとき、ブレーキパッドのリリースコントロール性能が重要な鍵を握っているのです。

当然、効きが足りずに「止まらない」では論外です。しかし、高精度なブレーキリリースは、効き過ぎるブレーキパッドでは実現できません。なぜなら、効きが強いパッドは、ペダル踏力を少しリリースしても、リニアに効きが弱まらず、コーナー入口でアンダーステアを誘発してしまうからです。

これでは、ドライバーがブレーキングテクニックを発揮できないことから、サーキットで速いドライバーは、効きの強いブレーキパッドは使いません。また、ドラテクの上達により、ブレーキパッドに求める効きは、どんどん弱くなる傾向にあります。それは、ハイスピードでコーナーをクリアするために、リリースコントロール性能がいかに重要かを理解しているからです。

アスリートのマラソンランナーが、少し大きなシューズを履かないように、タイムアタックでのブレーキパッドの効きも、「マージン」はデメリットにしかならないのです。

ラップタイムを縮めるための、最適な摩材チョイスとは、そのクルマに必要なギリギリの制動力を発揮できる摩材を選ぶことであって、効きに、「マージン」を持たせることではありません。

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